目 次
1.はじめに 中島生々庵六
2.北海道・東北
3.関東
4.中部
5.近畿
6.中国
7.四国
8.九州・沖縄
9.海外
10.さくいん
11.加盟柳社名
12.刊行・編集委員
13.あとがき
はじめに
待望の「日本川柳人名鑑」が発刊された。川柳以外にも、これに類する名称を冠せられた刊行物の例は少くないと思う。けだし、名鑑とか、記録とか言えば、古今東西を問わず、祖先の偉業を伝え、あるいは民族の変遷興亡を文章や絵巻物に託し、受け継いできた。
わが国での古代文学を検討してみても、「古事記」、「万葉集」はいわずもがな、平安、鎌倉、江戸時代と宮廷貴族から庶民社会に至るまで、その盛衰過程を、いとも詳細にしてかつ、克明に浮き彫りにされた「枕草子」「源氏物語」「大鏡」「奥の細道」などたどれば、私の頭ははちきれそうになる。
これらの諸書は、わが国の伝統と香り高い生活の営みを表現したものであり、そのいずれもが長い歴史に培われた記録である。それに比較すれば、「川柳」はまだ幼稚の域を出ないし、年輪のうえからも貫録負けは承知している。
そんな中で、この度「日本川柳人名鑑」を刊行することに踏み切った理由など、麗々しく物語ることは、むしろ私の方が気はずかしくおもはゆい気がする。しかし、現今の川柳界の流れ、川柳のあるべき姿などを頭に入れて考えてみると、この刊行が一時代のエポックを形成し、今日的思考の出発点の意味づけに気づく。また、こうした種類の刊行に当っては、卑近な例として「力と時と金」の三要素が必要である。と喝破した、かの西原柳雨の言葉が思い出されもする。
私たちは幸せなことに、全国の川柳人から限りないご理解とご支援を得て、これを唯一の足がかりにし、さらに強固なバックボーンの因子とし、日本川柳協会のタテとヨコとの結びつきの絆を強めることにより、いささかでも後世に史的な素材を残し得るのも、本書だと確信している。そして読者のかたがたはこうした私たちの純粋な心情と努力をくみとってほしい。
そして「よくやった」と評価していただければ、無上の喜びであり、かつ、日本川柳協会としては、初めての企画らしい企画が実ったものと自負し、その意義づけは日本川柳史の一里塚となろう。
ここに改めて、全国の皆さんからの善意と心温まるご支援を深謝し、あわせて未完成な本書について厳しい批判と、忌憚のない評価をお寄せいただければ幸いである。
昭和五十五年十一月
日本川柳協会 理事長 中島生々庵